住宅選びで多くの方が重視しているのが、断熱性能ではないでしょうか。
断熱性能の高さは「断熱等性能等級」で確認できます。
この記事では、断熱等性能等級について、1〜7まである等級の違いや調べ方について紹介します。
等級が高いメリットも紹介しますのでぜひ参考にしてください。
断熱等性能等級とは?
断熱等性能等級は、住宅性能表示制度の評価基準の一つです。
住宅性能表示制度には10分野の評価基準があります。
中でも重視されているのが「構造の安定」「劣化の軽減」「維持管理・更新への配慮」「温熱環境」の4つ。
断熱等性能等級は温熱環境に属し、耐震性と並んで最重要とされる項目です。
これまでは断熱等級4が最高水準
断熱等性能等級が最初に登場したのは1980年。
当時は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」により定められた省エネ基準を満たす等級2と、省エネ対策がなされていない等級1との2つのみでした。
その後は改正が重ねられ、1992年に等級3、1999年に等級4が新設。
2022年3月までは等級4が最高水準とされていました。
2022年に3等級が新設
2022年4月からは新たに等級5が、さらに10月には6・7が新設されました。
これは、気候変動問題解決のための世界規模のプロジェクト「2050年カーボンニュートラル」を実現するための取り組みでもあります。
断熱性能向上によって排出する炭素量を減らし、脱炭素化を目指すのが目的です。
2025年から等級4が義務化
2025年以降は等級4以上が義務化されます。
これは、2022年3月まで最高等級とされていた等級4が実質、最低等級になることを意味します。
2030年にはさらに省エネ基準を引き上げ、等級5が最低等級となる予定です。
断熱等性能基準等級4の仕様基準
2022年3月までは最高等級、2025年から最低等級となる等級4。
壁や天井、床に加えて窓にも断熱材を使用しているレベルで、等級3以下と比較すると高い省エネ水準です。
しかしこれは決して高水準とは言えません。
民間団体「HEAT20」の断熱基準では、等級4の室温基準は「冬の最低室温が8度を下回らない」とされています。
トイレや廊下など、暖房のない部屋が8度まで下がると、とても寒いイメージではないでしょうか。
そのため、等級4では不十分といえそうです。
断熱等性能等級の調べ方
販売中の物件に、断熱等性能等級の記載があることは多くはありません。
特に中古物件の場合は、断熱性能に触れられていないことがほとんどです。
等級を確かめるための方法を2つ紹介します。
- 性能評価書に記載がある
- 築年数をチェックする
詳しく見ていきましょう。
性能評価書に記載がある
断熱等性能等級は「設計住宅性能評価書」または「建設住宅性能評価書」に明記されています。
住宅性能表示制度を利用している物件の場合、これらの性能評価書を見せてもらうことで等級の確認が可能です。
まずは住宅会社や不動産会社に問い合わせることをおすすめします。
築年数をチェックする
建物の築年数から断熱性能をある程度予測することも可能です。
住宅性能表示制度が開始された2000年4月以降は等級4の物件が多くあります。
また、等級3が制定された1992年頃から断熱性能は向上していると言われています。
2000年以降は等級4、1992年〜1999年は等級3、1991年以前は等級2以下が一つの目安。
ただし、築年数が古くてもリノベーションで断熱性能が向上している場合があるので、販売元に確認しましょう。
断熱等性能等級の違いと関連用語
断熱等性能等級は「UA値」「ηAC値」から決定されます。
これらは住宅の外皮性能(壁・床・屋根の断熱性能)を示す指標です。
7等級ある断熱等性能等級の違いと、覚えておきたい専門用語について紹介します。
各等級の違い
断熱等性能等級は最も高い等級7から、省エネ対策なしの等級1まであります。
それぞれどうちがうのか、以下の表にまとめました。
断熱等性能等級 | 特徴 |
---|---|
等級7 | 2022年施行、熱損失等のより著しい削減のための対策が講じられている。 暖冷房の一次エネルギー消費量を40%削減。 |
等級6 | 2022年施行、熱損失等の著しい削減のための対策が講じられている。 暖冷房の一次エネルギー消費量を30%削減。 |
等級5 | 2022年施行の「ZEH基準」。 熱損失等のより大きな削減のための対策が講じられている。 |
等級4 | 1999年制定の「次世代省エネ基準」。 熱損失等の大きな削減のための対策が講じられている。 (省令で定めた建築物エネルギー消費性能基準相当) |
等級3 | 1992年制定。 熱損失等の一定程度の削減のための対策が講じられている。 |
等級2 | 1980年制定。 熱損失の小さな削減のための対策が講じられている。 |
等級1 | その他 |
断熱等性能等級は、1980年にはじめて登場し、省エネルギー基準改定のタイミングで新たな等級が新設されてきました。
次の項目から、2022年に新設された等級5の「ZEH水準」や、等級を決めるのに重要な「UA値」の他、「ηAC値」「HEAT20」などの関連用語について解説します。
ZEH水準
ZEH(ゼッチ)はNet Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略。
エネルギー収支をゼロ以下にする家を意味します。
具体的には、太陽光発電や省エネ設備導入、断熱性能により、消費エネルギーより生み出すエネルギーが上回る住宅のことです。
等級5以上であればZEH水準を満たしているため、高い断熱性を期待できます。
UA値
UA値(ユーエー値)は、住宅から失われる熱量の平均値です。
天井や外壁、床を通過して室内から外へ逃げる熱量を平均した値で、数値が小さいほど熱が逃げにくいことを意味します。
UA値は地域によって理想とされる数値が異なります。
例えば同じ等級5の家でも、東京ならUA値0.6ですが、札幌ではUA値0.4です。
ηAC値
ηAC値(イータエーシー値)は、住宅にどのくらい日射熱が入るかを表した数値です。
数値が大きいほど日射熱が住宅内に入り、室内が暑くなりやすいことを示します。
ηAC値が小さいほど遮熱性能が高いため、夏季のエアコンの効きがよくなります。
HEAT20
HEAT20は2009年に発足した民間団体。
正式名称は「一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」です。
HEAT20は団体名ですが、建物の省エネと室温の2つを指標とした外皮性能水準(屋根、壁、床、窓の断熱性や遮熱性)を指す用語でもあります。
HEAT20ではG1〜G3の3段階の住宅外皮水準を制定。
ZEH水準よりも厳しく、今後の高断熱住宅の新たな指標となっています。
断熱等性能等級が高いと得られるメリット
断熱等性能等級が高いことで得られるメリットは3つあります。
- 室内環境が快適になる
- ヒートショックのリスクを軽減できる
- 長期優良住宅に認定される
以下、それぞれ詳しく説明します。
室内環境が快適になる
断熱等性能等級が上がると、室内と外気の熱の出入りが少なくなります。
外気に影響されづらいことでエアコンの効率がアップし、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせます。
また、吹き抜けや高天井の間取りは暖かい空気が上に溜まりますが、断熱性能が高ければ室温調整がしやすくなる点も嬉しいメリットです。
ヒートショックのリスクを軽減できる
ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い部屋へ移動した際の温度差によって血管が収縮し、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす現象のこと。
特に冬場、10度以上の寒暖差がある場所を行き来すると危険性が高まります。
もし廊下や脱衣所、トイレなどが寒い場合は、暖房器具を活用するなどの対策が必要です。
断熱等性能等級が高ければ極端な寒暖差が発生しないため、ヒートショック防止に繋がります。
長期優良住宅に認定される
2022年10月以降、長期優良住宅の基準として「断熱等性能等級5以上」が加わりました。
長期優良住宅に認定されると、住宅ローン金利の優遇、地震保険料割引、不動産所得税の減税など、金銭面でのメリットが多くあります。
新潟県の住宅に求められる断熱性能
新潟県は冬の寒さが厳しく、高気密高断熱住宅の需要が高い地域です。
また、県として省エネ住宅の普及に力を入れており、補助金制度が用意されています。
新潟県の省エネ基準地域区分や理想のUA値、住宅の補助金制度について紹介します。
省エネ基準地域区分では4地域と5地域
新潟県は省エネ基準地域の4地域と5地域に区分されています。
市町村ごとの区分は以下の通りです。
地域区分 | 市町村 |
---|---|
4地域 | 関川村、村上市、阿賀町、小千谷市、十日町市、 魚沼市、南魚沼市、湯沢町、津南町 |
5地域 | 胎内市、聖籠町、新発田市、佐渡市、粟島浦村、 阿賀野市、五泉市、新潟市、三条市、田上町、 加茂市、見附市、長岡市、燕市、弥彦村、出雲崎町、 柏崎市、刈羽村、上越市、妙高市、糸魚川市 |
「4地域」に9市町村、「5地域」に21市町村が区分されており、新潟市、長岡市、上越市などは5地域に入っています。
UA値は0.75〜0.87以下が理想
続いて、4地域と5地域に求められるUA値を見ていきましょう。
UA値は、壁、床、屋根などの断熱性能を表し、数値が小さいほど断熱性能が高くなります。
断熱等性能等級ごとのUA値は以下の通りです。
断熱等性能等級 | 4地域 | 5地域 |
---|---|---|
7 | 0.23 | 0.26 |
6 | 0.34 | 0.46 |
5(ZEH基準) | 0.5 | 0.6 |
4 | 0.75 | 0.87 |
断熱等性能等級4が最低基準ですが、実際等級4では寒いと感じる方が多くいらっしゃいます。
2022年4月に新設された断熱等性能等級5(ZEH基準)以上をクリアするには、4地域ならUA値0.5以下、5地域なら0.6以下を目指す必要があります。
省エネ住宅の補助金制度
断熱等性能等級の高い住宅は、国や自治体による補助金制度を活用できます。
例えば新潟県独自の省エネ住宅制度である「新潟県版雪国型ZEH」。
断熱性能や気密性能などの基準を満たすことで、65万円の補助金を受けることができます。
太陽光発電や蓄電池などの設備を設置することで、さらに補助額を上げることも可能です。
詳しくは以下のページをご覧ください。
新潟県の気候を踏まえて断熱性能を高めた住宅「新潟県版雪国型ZEH」
断熱等性能等級4以上でも寒いと感じる時の対策
断熱等性能等級が高い住宅でも、暑い・寒いの感じ方には個人差があります。
住宅で寒く感じた場合の対策についてまとめました。
- 断熱カーテンや断熱ボードを活用する
- 窓やドアに隙間テープを貼る
- 廊下や脱衣所にも暖房器具を置く
以下で詳しく紹介します。
断熱カーテンや断熱ボードを活用する
住宅の断熱効果を高めるためには、断熱カーテンや断熱ボードの活用が効果的です。
断熱カーテンは裏地に特殊加工が施されており、熱がカーテンの反対側に伝わりにくくなっています。
断熱ボードは窓枠にはめこむボードで、窓のサイズにあわせてカットして使います。
室内の暖かい空気を外部へ逃さないためにも、ぜひ活用を検討してみましょう。
窓やドアに隙間テープを貼る
窓やドアの小さな隙間で空気が出入りするのを防ぐなら隙間テープがおすすめ。
100円ショップでも入手できる手軽さですが、室内の気密性を一気に高めてくれます。
窓のサッシなら窓枠横に、ドアの場合はドアと床の隙間に貼るのが効果的です。
廊下や脱衣所にも暖房器具を置く
廊下や脱衣所、トイレなどは寒くなりがちな空間は、小型の暖房器具で対策を。
寒い場所を作らないようにすることは、ヒートショック防止にも役立ちます。
最近では脱衣所専用の暖房器具なども販売されていますので、ぜひ設置を検討してください。
まとめ
断熱等性能等級について、等級ごとの違いや専門用語、新潟県の場合の断熱等性能等級などを解説しました。
断熱等性能等級は高いに越したことはありませんが、等級を高くする分建築コストも高くなります。
等級5(ZEH相当)を一つの基準として住宅選びをするよう心がけましょう。
弊社トスケンホームでは、断熱等性能等級5以上の物件のみ取り扱っています。
新潟県内の物件見学は随時Webから予約受付中です。
ぜひお気軽にお問い合わせください。